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スウェーデンコラム「瑞筆」

第9回 久しぶりのスウェーデン/島田晶夫

7月中旬から下旬にかけて、スウェーデンに出かけて来た。私事で恐縮だが、僕自身の結婚式を兼ねての旅行で、スウェーデン、デンマーク、オーストリアの3ヶ国をまわる16日間のスケジュールである。
以前より僕たち夫婦はささやかで良いので自分達らしい式を挙げられないものかと話していたのだが、今回僕がカペラゴーデンの卒業式を行った教会で挙げさせてもらえることが決まり、スウェーデンの友人、知人に連絡を取り、慌しく旅支度を整え、いざ出発となった。

ストックホルム・アーランダ空港に到着したのは家を出てから実に22時間後のことだった。久しぶりの長旅にさすがに疲れを感じはしたが、出口のゲートを抜け、僕たちの到着を待っていてくれたアンナの顔を見るとスウェーデンに来た喜びで疲れは吹き飛んだ。
4年ぶりの再会に、アンナの第一声は「あら、ちゃんとスウェーデン語を話しているじゃない!」というもので、久々に使うスウェーデン語にかなりギクシャクしていた僕もつい苦笑してしまう。アンナはカペラ時代の友人で、当時はテキスタイル科を専攻していたが、同じくカペラ時代の友人で僕の木工科の先輩でもあるイェルケルとの間に5歳の男の子と1歳の女の子がおり、たくましいお母さんになっていた。今回は彼らの家に2泊させてもらうことになっていた。
 空港から車で約1時間。ストックホルムの郊外にある二人の家に着いたのは、夜も11:00近かったが、外はまだ薄っすらと明るさが残っている。さすが白夜の国だ。二人は昨年、築50年というこの家を購入し、自分達の手でリフォームしている最中だった。しかし元々手入れが行き届いていた家のようで、少しも古さを感じさせない。カラフルだったという壁紙も、二人の手できれいに剥がされた後白くペイントされていて、しっかりモダンな佇まいに変わっていた。「この辺は一軒家を借りると高い(月12〜13万円位)けど、買うと安い(500万円位)からね。」とイェルケルは照れながら話しているが、そんな値段でこんな立派な家が買えるのか?」とうらやましくなる。

 ところで、アンナとイェルケルは二人の子供を一緒に育て、家も二人で買っているのだが、まだ結婚はしていない。スウェーデンでは結婚という制度を使わないカップルも多く、また、子供がある程度大きくなってから結婚すると言うカップルもかなりいる。この国ではかなり以前から事実婚を認めており、社会的にも一般生活を送る上でもまったく支障がないように制度が整っているのである。
 この事実婚の場合、産まれてきた子供は夫婦両方の姓を名乗るのが一般的で、日本名で例をあげると、「山田・佐藤 太郎」ということになる。日本語だと短いけれど、スウェーデン語だと結構長い名前になっている人が多く、テストの時名前を書くのが大変だろうなと僕などは心配をしてしまうわけだが、このように両姓を名乗っている友達は僕の周りにもたくさんいたので、本当にごくごく普通のことなのだ。
 さて、それでは結婚が軽々しく考えられているかというと、そんなことはなく、逆に重みのある大切なことであり、それ故真剣に、慎重に、と言うのが本当のところではないだろうか。アンナ自身も「近いうちに結婚したいと思ってる」と言っており、この夏の間に婚約するのだと嬉しそうに話していた。どこの国でもやはり結婚するということは、人生の一大事のようである。

さて、僕達がストックホルムに着いた頃、最高気温が35℃まで上がるという猛暑とも言うべき日が続いていた。空気が乾燥しているので蒸し暑くは無いけれど、それでも肌がじりじりと焼けてきて、汗が玉になって流れた。こんなに暑いのは珍しく、異常気象ということだった。
あんまり暑いので、近くに住むアンナのお父さんが、自家用ボートで海の中にある小島にピクニックにでも行こうかと誘ってくれた。ストックホルム近郊には大小合わせて2000以上の島がある。大きな島には住宅が建てられていたりサマーハウスがあったりするが、無数にある小さな小さな島では、ピクニックをする人や日焼けする人、泳いだりヨットの練習をしたりする人たちがそれぞれ自家用ボートでやって来て、休日を思い思いに楽しんでいるのだ。
 アンナのお父さんは長い間大きな船の船長さんをしていた人で、ボートの運転などは朝飯前といった感じで、細い水路でも前などさっぱり見ないで僕達にあれこれと周りの景色の説明をしてくれる。ボートにはボートの交通ルールがあるらしく、横の水路からひょいと出てきたボートに腹を立てると、決して抜かされるものかとエンジンをぶんぶん言わせていた。しばらくして自分のボートのエンジンを指差すと、「ヤマハ最高!」と言って僕達にニヤリと笑って見せた。こんなところでもヤマハのエンジンはがんばっているのだなーと何とも不思議な気分である。

さて、これから教会で式を挙げるのだとわかっていたにもかかわらず、ピクニックでしっかり小麦色に焼けてしまった僕達は、翌日迎えに来てくれた同じくカペラ時代の友人のヘンリックに大笑いされながら、今度はストックホルム中心部へと向かった。彼の友人のアパートに泊めてもらいながら市内を観光する予定だった。
 ストックホルムの市街は美しい町並みとしても有名である。もう何度も訪れ、休みの間に2週間住んでいたこともあるのだが、それでもやはりこの街並みには心を動かされる。
この市の中心部には、中世の街並みがそっくり残るガムラスタン(旧市街)をはじめ、ノーベル賞受賞式でおなじみの市庁舎、王宮など観光名所が多々とあり、大体が歩いて回れる距離にあるのだが、残念ながら今回はあまり時間に余裕がなかったため、こう言った名所をまわるのは断念し、代わりに家具や雑貨のデザインショップを巡ることにした。
北欧デザインが好きな方であれば垂涎の店がひしめきあうこの街では、とにかく欲しくなるようなものばかりが目に飛び込んでくる。アンティークショップなどでは、本でしか見たことの無いようなデザイナー家具や照明が、所狭しと並んでおり、思わず息を呑んだ。
 しかし、ため息が出るような魅力的な品々ではあったが、日本に持って帰るには大きすぎ、重たすぎ、そして値段も高すぎるのであった・・・
「次回は買いに来るぞ!」と自分の中に望みを残しつつ、後ろ髪引かれる思いでストックホルムを後にする。いよいよ式の打合せをするため、牧師さんに会う日がやってきたのである。

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Columnist Profile
島田晶夫さん
1971年北海道苫小牧市生まれ。
1995年国立高岡短期大学産業工芸学科木材工芸専攻(富山県)卒業後、(財)スウェーデン交流センター(当別町)木材工芸工房の研修員として在籍。 1997年スウェーデン・カペラゴーデン手工芸学校 家具&インテリア科に留学、2000年スウェーデン・OLBY DESIGN(株)入社。 2001年帰国しDESIGN STUDIO SHIMADA設立とともに(財)スウェーデン交流センター木材工芸工房主任研修員として活躍中。
展覧会として、2002年第15北の生活産業デザインコンペティション入選・個展ギャラリーたぴお(札幌)、2003年グループ展(三越倉敷支店)、2004年2人展コンチネンタルギャラリー(札幌)、暮らしの中の木の椅子展入選。


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