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スウェーデンコラム「瑞筆」

第4回 ごちそうさま!/本田倫子さん

旅行でも留学でも外国に滞在するとなると、言葉の次に気になるのは食べ物じゃないかと思う。ご飯が口にあわないとかなりツライ。逆に滞在中のご飯がおいしいと全てがバラ色になるのは私だけではないはず。

冬に国際電話で姉と話しているとやはり食べ物の話題になり「珍しいものって何食べた?」と聞かれた。しばらく考え「びっくりするような珍しい物はないなぁ。うーん、最近トナカイ食べたくらい」と私。後から聞くと、私がトナカイを食べた話を当時4歳の甥っ子が知り「え!?今年、サンタさんどうやって来るの?」と本気で心配していたらしい。いえいえ、私が食べたのは野生のトナカイなので心配は無用でございます。

私のスウェーデンでの食生活はいつも恵まれている。1週間ほどの音楽セミナーに参加すると、合宿のような感じで3食付の場合がほとんど。そして毎回おいしい!観光地のレストランを食べ歩かなくてもスウェーデンらしい食事、ピッティパンナ(目玉焼き付きポテトと肉の炒め物)、ファールコルブ(スウェーデン風ソーセージ)、ヤンソンさんの誘惑(ポテトとアンチョビのクリームグラタン)、リンゴンジャムとブラウンソースのミートボール、鹿のスープ、クネッケブロード(薄焼き乾パン)、フィルミョルク(とろっとしたサワーミルク)と一通り出てくるのだから毎日楽しみで仕方ない。クリーム系の料理も多いが、酢漬けや魚料理もあり何かと飽きない。また極端に日照時間が短い冬の期間でも現代は輸入で豊富な野菜がある。

留学先の食事はというと、お店らしいお店はほとんどない田舎にあるため料理人が常駐していた。3食と3回のフィーカ※1付きという何とも贅沢な生活だ。この料理人の腕は抜群でファンも多く私もその一人。フィーカのおやつは手作りのことも多く、カネルブッレ(シナモンロールパン)、アイスクリームのベリー添え、ニーポンソッパ(ローズヒップのどろっとした飲み物)、リスグリンスグルート(シナモンのかかったお米の砂糖入りミルク粥。私は苦手)、季節によって酸味のあるラバルベル(ルバーブ)のパイやセームラ(アーモンドペーストと生クリーム入りパン)などなど。夕食の時間が早かったため、私達の夜のフィーカはおやつというより軽食で、22時頃ラウンジに集って談笑しながら食べていた。今思うと食べてばかりの日々だったが、何せ演奏は運動!お腹がすくのだ。体を痛めないよう演奏前後はストレッチもするし、ダンスレッスンに加え、体育もあり腹筋や腕立て伏せもしていたのだ。太ることはなく、逆に引き締まって帰国した。(帰国するとあっという間に締まりはどこへやら・・・)

そんなスウェーデンご飯大好き!の私が驚いた「食」。数あるうちの一つは、木曜日の豆スープとパンケーキ。パンケーキには生クリームとベリーのジャムを添える。初めてスウェーデンに行った時友人宅に呼ばれたのが木曜で、そこで豆スープとパンケーキを出された。一緒にいた日本人がエビが食べたいと買って来たのだが同席していた別のスウェーデン人に「木曜なのに、エビ!?」と驚かれたのだ。私からすると「エビの何が悪い!?」である。学校でも木曜はかなりの確率でこのメニュー。誰に聞いても理由を知らないというのでインターネットで検索してみると、昔々カトリックがスウェーデンに入ってきた頃の習慣という話が出てきた。貧しかった当時、成長の早い豆を使った濃いスープを金曜の断食前、つまり木曜に食べていたのだとか。興味深い話だ。

さて、スウェーデンの家庭料理がとっても気に入った私はある日、料理の本を買うことにした。凝った料理じゃなく、普通の家庭料理の本が欲しい。そう学校スタッフと雑談をしていると、「husmanskost」と買いてある本を探したらいいよ、と教えてくれた。「家庭料理」という意味なのだそう。中でも「Annas mat」という本が定番らしい。「大学や就職で家を出る時におばあちゃんが『一人でちゃんとご飯作れるかな?』なんて心配してプレゼントしてくれる、そんな典型的な料理本よ。大抵の家庭料理は載っているからおススメ!」なのだそう。本屋に行くとすぐに見つかった。実際手にしてみると写真が少なく文字が多い。うーん、こんなに分厚いと読む気がしない・・・とさらに物色を続けていると、にっこり笑った女性の表紙が目に留まった。中は写真中心。しかもセールの値札。これは買わねば!この本と他適当に数冊買って帰り早速学校スタッフに見せた。すると「ティーナの本買ったのね!」と、笑顔の女性の本を指差した※2。ティーナはテレビで人気の料理家なのだそう。決めポーズのようにニコって笑って「それがまた可愛いの!」と言う。人気料理家のレシピと聞くとどんな味がするのかな?と思うものの本を買って満足してしまった。いまだ本を見て作ったことがない。

結局作ってみるのは実際に食べ、直接作り方を習ったものになってしまう。という訳で、ここで私の思い出のスープを紹介。ミニトマト入りトマトスープ。スウェーデン料理という訳ではないが、これはスウェーデン人の友人が外でテントを張って火を起こして作ってくれたスープだ。
―水、ブイヨン、トマトピューレに、ミニトマト(二人前なら10個程度)を半分に切り入れ、トマトが柔らかくなるまで煮込む。レンズ豆やジャガイモ、きのこ等加えてもおいしい。味付けに塩コショウを少々。バジルをたっぷり。そして日本びいきの友人は何とここで粉末柚子ゴショウを入れた(私は七味唐辛子を代用)。チーズを削り入れ(パルメサン粉チーズを代用)スープに溶かしてよく混ぜる。このスープには、もちっとした食感のパンが良く合う。
「今から沢山演奏するからしっかり食べて」とこのスープを振舞ってくれた。(そう、私はどこへ行っても弾くか食べるかばかり)その日は肌寒く小雨も降っていたが、トマトの香り、チーズのこく、柚子ゴショウのピリっとしたスパイスが体にじんわりしみた思い出の味だ。

※1・・・fika コーヒーブレークのこと。職場や学校でも午前と午後に設けられている。「ランチタイムは食事の時間で休憩ではないから、フィーカ、つまり休憩が必要なのだ」と聞いた。
※2・・・”Tinas kök”

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Columnist Profile
本田倫子さん
福岡県出身、奈良県在住。ニッケルハルパ奏者。
スウェーデン各地の伝承音楽を多くの著名プレーヤーから学ぶ。 2006年、国立民族音楽センターでもあるEric Sahlström Institutet、ニッケルハルパ演奏課に留学。また、エスビョン・ホグマルク氏より楽器の伝統等について学ぶ。 Zornmärketにて、2007年、2008年参加。それぞれディプロム賞、銅メダルを獲得。 ソロやスウェーデンとノルウェイの音楽を演奏するデュオ、“fiss”にて活動。


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