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スウェーデンコラム「瑞筆」

第6回 飲み物あれこれ/本田倫子さん

さてスウェーデンのお酒と言えば、ブレンヴィン(brännvin)や、その仲間のアクアヴィット(aqvavit)がある。それぞれ“燃えるワイン”、“命の水”という意味。燃える“ワイン”といってもどちらも芋の蒸留酒。これにアニス、キャラウェイ、クミン、フェンネルなど様々なハーブが加えてある。どのハーブかは銘柄ごとに違うので風味はそれぞれ。
舐めるように少し口に含むとふわっと広がるハーブの香りと、スパイスのように舌にピリリと感じるアルコールが面白くて癖になる味だ。

ところで、スウェーデンにはdryckvisaとか snapsvisaというドリンク・ソングが沢山ある。一言でいうと乾杯する時の歌のこと。短いフレーズのドリンク・ソングならヨーロッパの他の国でもあるが、ちゃんと曲としての長さがあるドリンク・ソングは北欧がダントツで多いと聞いた。陽気な酔っ払いの歌というイメージが先行しがちだけど、しっとりした曲などバラエティに富む。
私が同席するテーブルは音楽に携わる人ばかりだからか歌が上手くてレパートリーも豊富。次々と色んな歌が飛び出して楽しい。ふと誰かがグラスを片手に歌い始めると、皆グラスを持ち一緒に歌う。歌が終わると「Skäl(乾杯)!」で締めくくり、ゴクっと飲む。グラスをテーブルに置いた後、数秒沈黙が流れ静かに皆と目が合う。私はこの余韻を味わうような沈黙の瞬間が一番好きだ。

お酒以外では、北欧と言えばやはりベリー系の飲み物。種類豊富でおいしい。
リンゴン(lingon こけもも)、トランベール(tranbär クランベリー)、フレーデル(fläderエルダーフラワー)などの果汁に砂糖等を加えたジュース(saft)は食事の際によく飲まれる。スーパーで手の平サイズの小さな紙パックでも沢山売っており、水で4-5倍に薄めて飲む。このサイズだと手軽に買えるし、グラスで薄めて少しずつ飲めるので旅先で買いやすい。

もう一つ、意外に楽しめるのがペットボトルの水。ベリー各種を始め、シトラス、パッションフルーツ、色々な香りがついた水が売っていて毎回どれにしようか目移りしてしまう。微炭酸で軽くシュワシュワした水に、香りがはじける感じがとっても爽やか。
スウェーデンでは香りをつけたものが好まれるのか、こうしたベリー系の風味の紅茶やルイボスティーなんかもよく見る。

話はそれるが飲み物と言うと、一つ痛い思い出がある。
ある時、自転車ツアーに参加した。3時間かけてストックホルムの要所を巡るというもの。集合場所にいくと、その日の参加者は私とオーストラリア人男性のみ。ツアーのガイドは競輪の選手で、休みを利用してこのバイトをしているという。「じゃ、行くよ!出発!」チャリンチャリンともの凄いスピードで坂を上る。「待ってくれ〜!」と私はギアチェンジのコツもつかめずついて行くのに必死。観光客の間をぬって石畳の街中を駆け巡るのは気持ち良いのだが、追いついては肩で息をしながら説明を聞く、という繰り返しでへとへとになってしまった。
ツアー終了後、ヨレヨレになった私はこれは一杯飲みたいと、旧市街ガムラスタンの広場(Stortorget)に面したレストランのテラス席へ。早速冷えた生ビールをゴクゴク。 ぷはー、気持ちいい。

ここで一つ断っておくが私はお酒に弱い。こんな風に全身疲労の後に飲んだことはなかった。疲れのせいか、アルコールのせいか、その夜は全く眠れなくなってしまった。なんとか眠ろうとベッドで横になっていると深夜、部屋のノブをがちゃがちゃとする音が。「え?まさか?」と思っていると誰かが部屋に入ってきた足音がする。間違いか、強盗か。とにかく怖くてひたすら寝たふりをした。薄目でみえた人影は暗い部屋を真っ直ぐ窓辺まで歩き、そこから部屋を見渡しているように見える。そのまま引き返しドアを閉める音がした。そこで一気に私は飛び起き部屋の電気をつけた。鍵も確認した。ロックもチェーンもかかっている。財布とパスポートを確認したが何も盗られていない。間違えて入っただけだったのか?

翌朝チェックアウトの時に抗議した。
「ここのセキュリティーはどうなっているんですか!?」
すると「鍵はかけていましたか?」と聞く。
「もちろん」
「チェーンは?」とさらに聞く。
「確認しました!!」
「それで人が入るなんてありえません」と怪訝な顔をするフロント担当者。話しても無駄だ。被害がなかったからもういいけど今後のためにしっかり確認をして下さい、と言い残し空港に向かった。
空港に向かう電車の中で考えていた。「チェーンをかけているのに人が入るはずがない」って・・・。確かに。ありえない。チェーンをかけたまま人は入れない。じゃあ、あれは何!?急にゾーッとして鳥肌がたった。
すぐさま福岡の家族に電話をすると「夢でも見たんやろ。酔っ払っとったんじゃないと?」
ドキ!確かに。 あんなクレームを言って・・・今となっては恥かしいやら、申し訳ないやら。 ただ反省するばかりだ。が、旅先の疲れは自分でも気づきにくいもの。
くれぐれも旅の疲れと飲みすぎには要注意!

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Columnist Profile
本田倫子さん
福岡県出身、奈良県在住。ニッケルハルパ奏者。
スウェーデン各地の伝承音楽を多くの著名プレーヤーから学ぶ。 2006年、国立民族音楽センターでもあるEric Sahlström Institutet、ニッケルハルパ演奏課に留学。また、エスビョン・ホグマルク氏より楽器の伝統等について学ぶ。 Zornmärketにて、2007年、2008年参加。それぞれディプロム賞、銅メダルを獲得。 ソロやスウェーデンとノルウェイの音楽を演奏するデュオ、“fiss”にて活動。


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