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スウェーデンコラム「瑞筆」

第9回 スウェーデンでの12月/本田倫子さん

私が滞在していたウップランド地方は、この季節になると8時の起床でやっと朝焼けが見え、お昼の15時には外はまっくらだった。暗く長いと聞いていた冬は私には新鮮に思えて妙にワクワクしていた。
そんな留学中の12月はイベント続きで毎日がとても忙しかった。
一つは私たち演奏課とダンス課の合同クリスマスコンサートの準備。夜22時まで30分単位でリハーサルがあり、予定表担当者が壁に張り出すスケジュールに日々追われていた。
またミーティングも定期的にあるのだがこれが実は私には苦痛でしかたなかった。
聞いたところによるとスウェーデンらしい議論とは、自己主張や意見の激しいぶつかりあいではなく、また妥協点を探りあうという感じでもなく、お互いが納得するまで延々と話し合いを続けるのだとか。「バトル」でも「和」でもない、まさに平等主義的ということなのか。私たちのミーティングもそんな感じで全員が納得するまで終了せず、毎回数時間に及ぶのでたまったものじゃない。主に私たち演奏課とダンス課との間で、音楽のためのダンスか、ダンスに合わせるための音楽か、という視点で衝突がおきるのでなかなか決着がつかないのだ。

このコンサートではフィーカ(fika ティーブレイク)の飲み物とおやつも販売するので、全て手作りにしようと時間の合間をぬってルッセカッテルを大量に焼くことになった。
ルッセカッテルは、12月13日の光の聖女のお祭り、ルシア祭で食べるサフラン入りのパンのこと。クリスマスコンサートなのにルシア祭のパン?と思う人もいるかもしれないが、スウェーデンのクリスマスは、アドベントといって12月25日の4週前の日曜に始まるのでルシア祭も含めてみんなクリスマスイベントと捉えることが多いのだ。
(ちなみに私の留学先では、ルシアの日は定番の白い衣装と白いとんがり帽子をかぶった校長と先生たちのサプライズ演奏があった。実は校長はギタリスト兼シンガーでCDも出しており、この日ギターをかき鳴らしシャウト気味に歌うルシアの歌はとってもかっこよかった。)

さて、せっかくなのでこのルッセカッテルを焼く時に使用したレシピを写させてもらうことにした。

イースト 50g   サフラン 1g
マーガリン(バター) 150g   塩 0.5ティースプーン
ミルク 5dl   たくさんの小麦粉  
砂糖 1dl  

ここまで書き写すと、思わず手をとめて私は「何、それ?」と言った。「たくさんの小麦粉?」そんな適当なレシピ見たことない。日本ではありえない!友人は、変な子ね、といでも言うような目で私をちらっとだけ見た。
「たくさんってどのくらい?このレシピ、変じゃない?」と尋ねてみると「1.4〜1.5 liter位かなぁ。分からないけど。そんなに気にしなくても大体の感じで良いんだってば。」と言う。そんな大雑把な、とあきれてしまう。でも、雑に作ってもおいしくできるということでしょう!

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さて、作り方は上記のレシピを混ぜたら30分発酵させ、小さくちぎって手でくるくると細長く伸ばし、両端を写真のようにクルンと巻いて渦巻きの中心にレーズンを1個ずつ載せる。この状態で40分発酵。そして200度のオーブンで5-10分焼くと出来上がり。
カッネルブッレ(kanelbulle)というスウェーデンの定番おやつ、シナモンパンの作り方も生地まで同じで(サフランは入れない)、こちらは長方形に薄くのばした生地に、上からバターと砂糖とシナモンを混ぜたペーストを塗り、その生地をナイフで細く切ってクルクルとロールしてから焼く。大量にできるので食べるときまで冷凍保存しておく。

そうして授業の合間をぬって頑張った甲斐あってコンサートは無事に満席で終了した。フィーカの売り上げとともに一人当たりちょっとしたおこずかいになった。思い出とともに初めてのご褒美をもらったような気持ちになり何だか嬉しい。

早速コンサートが終わると、次は先生の指導の下、自分たちのためにクリスマス用お菓子作りを始めた。キャラメル、飴、チョコレートなど日持ちする定番の一口お菓子を大量に作っていく。こうした日持ちする食べ物はクリスマス料理も同じで、数日分の大量のごちそうを作った後は何日もかけてダラダラと食べ続けるそう。まるで日本のお正月料理のようだ。

クリスマスというと12月25日までのイベントという印象が強いが、スウェーデンではまだまだ続く。キリストの誕生から13日後に3人の賢者がキリストのもとを訪れたという話があり1月6日までがクリスマス期間。そして20日後の1月13日にやっとクリスマスツリーを捨て部屋のデコレーションなども片付けるという習慣なのだそうだ。この話を教えてくれたダンス課の先生は、クリスマス期間中にアメリカに行った時、クリスマス当日が過ぎ12月26日になると一斉に町からクリスマスイルミネーションがなくなりとってもショックを受けたのだとか。
皆さんも今年はスウェーデン風スローなクリスマスを年明けまでお過ごしくださいませ。

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Columnist Profile
本田倫子さん
福岡県出身、奈良県在住。ニッケルハルパ奏者。
スウェーデン各地の伝承音楽を多くの著名プレーヤーから学ぶ。 2006年、国立民族音楽センターでもあるEric Sahlström Institutet、ニッケルハルパ演奏課に留学。また、エスビョン・ホグマルク氏より楽器の伝統等について学ぶ。 Zornmärketにて、2007年、2008年参加。それぞれディプロム賞、銅メダルを獲得。 ソロやスウェーデンとノルウェイの音楽を演奏するデュオ、“fiss”にて活動。


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